理系の大学院生の皆さん、こんにちは!就職活動、本当にお疲れ様です。専門分野の研究に日々打ち込みながらの就活は、想像以上に大変ですよね。特に、エントリーシート(ES)や面接で必ずと言っていいほど聞かれる「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」について、「研究以外に話せるネタがない…」「研究の話をしても、専門的すぎて伝わらないのでは?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
しかし、その「研究」こそが、理系大学院生の皆さんにとって最強の武器となり得るガクチカなのです。
この記事では、なぜ研究がガクチカとして有効なのか、そして、あなたの研究経験を企業に響く魅力的なガクチカとして伝えるための具体的な方法を徹底的に解説します。具体的な例文や、ガクチカを構造化するためのフレームワークも紹介するので、この記事を読めば、自信を持って「ガクチカは研究です!」と言えるようになるはずです。
「ガクチカ 研究」で悩むすべての理系大学院生必見の内容です。ぜひ最後まで読んで、あなたの就活を成功に導くヒントを掴んでください。

<プロフィール>
✔2024年修士卒
✔学会発表2回、原著論文投稿2本
✔早期選考で国内大手企業複数内定
✔現在、国内大手企業で勤務中
✔研究実績により奨学金半額免除
「ガクチカ」は学生時代に力を入れたことの略

本題に入る前に、まず「ガクチカ」とは何か、そして企業がなぜそれを重視するのかを再確認しておきましょう。
ガクチカとは、「学生時代に力を入れたこと」の略称です。就職活動において、自己PRと並んで頻繁に問われる質問の一つです。
企業がガクチカを聞く主な理由は、以下の3点です。
- 応募者の人となりや価値観を知るため: 何に情熱を注ぎ、どのように考え、行動する人物なのかを知りたいと考えています。目標達成に向けて努力した経験は、その人の個性や価値観を色濃く反映します。
- 自社で活躍できるポテンシャルがあるかを見極めるため: ガクチカで語られる経験から、目標設定能力、課題解決能力、粘り強さ、主体性、周囲との協調性など、社会で働く上で必要となる基本的な能力や資質があるかを確認しようとしています。
- 入社後の再現性を確認するため: 学生時代の成功体験や困難を乗り越えた経験が、入社後、仕事で壁にぶつかった時にどのように活かされるか、再現性があるかを見ています。
つまり、ガクチカは単なる「頑張ったこと自慢」ではありません。「あなたがどのような経験を通して、何を学び、どのような強み(=企業で活かせる能力)を身につけたのか」を具体的に伝えることが求められているのです。
なぜ理系大学院生の「研究」は最強のガクチカなのか?
さて、本題です。なぜ理系大学院生にとって「研究」がこれほどまでに強力なガクチカとなり得るのでしょうか? その理由は、研究活動を通して培われる能力が、企業が求める能力と非常に高いレベルで合致しているからです。
研究活動は、単に実験やデータ解析を行うだけではありません。そこには、以下のような多岐にわたるプロセスと、それによって磨かれる貴重なスキルが含まれています。
- 課題設定・発見能力:
- 研究テーマの設定、既存研究の調査、未解決の問題点の発見など、自ら課題を見つけ出す能力。
- 企業においても、現状の課題を発見し、改善提案や新規事業の種を見つける力は不可欠です。
- 仮説構築・検証能力:
- 課題に対して仮説を立て、それを証明するための実験計画を論理的に設計する能力。
- 実験結果に基づき、仮説を修正し、再度検証を繰り返すプロセス。
- これは、ビジネスにおける企画立案、実行、効果測定、改善のPDCAサイクルそのものです。
- 論理的思考力:
- 複雑な事象を要素分解し、原因と結果の関係を明確に捉え、筋道を立てて考える力。
- 研究計画の立案、データ解釈、論文執筆など、研究のあらゆる場面で求められます。
- ロジカルシンキングは、業界・職種を問わず、ビジネスパーソンにとって必須のスキルです。
- 問題解決能力:
- 研究は常に順風満帆とは限りません。予期せぬ実験結果、装置のトラブル、理論と現実のギャップなど、様々な壁に直面します。
- それらの困難に対して、原因を特定し、代替案を考え、粘り強く解決策を見つけ出す能力。
- この経験は、仕事で発生する予期せぬトラブルや困難な状況に対応する力に直結します。
- 粘り強さ・継続力:
- 修士課程であれば2年間、博士課程であればさらに長期間、一つのテーマに対して地道な努力を続ける力。
- すぐに成果が出なくても、諦めずに試行錯誤を繰り返す精神力。
- 長期的な視点で物事に取り組み、成果を出す力は、多くの企業で高く評価されます。
- 計画性・実行力:
- 限られた時間の中で成果を出すために、研究スケジュールを立て、タスクを管理し、計画通りに実行する能力。
- 学会発表や論文投稿の締め切りから逆算して、マイルストーンを設定し、進捗を管理する経験。
- プロジェクトマネジメントの基礎となるスキルです。
- 情報収集・分析能力:
- 膨大な先行研究や文献を調査し、必要な情報を効率的に収集・整理する能力。
- 実験データを客観的に分析し、統計的な手法を用いて意味のある知見を抽出する能力。
- 情報過多の現代社会において、正確な情報を取捨選択し、分析する力は極めて重要です。
- 専門性:
- 特定の分野に関する深い知識と理解。
- これは、研究職や開発職など、専門知識が直接活かせる職種ではもちろん、それ以外の職種においても、物事を深く掘り下げて考える能力の証明となります。
- プレゼンテーション能力・コミュニケーション能力:
- 研究成果を学会や研究室内で発表し、質疑応答に対応する経験。
- 指導教員や共同研究者と議論し、研究を進めるためのコミュニケーション。
- 専門外の人にも分かりやすく説明する能力は、社内外での報告や提案、顧客への説明など、様々な場面で役立ちます。
このように、研究活動はビジネスで求められる汎用的なスキル(ポータブルスキル)の宝庫なのです。学部時代のサークル活動やアルバイト経験も素晴らしいものですが、研究活動ほど長期間にわたり、深く、多角的にこれらの能力を鍛え上げられる経験は稀です。
だからこそ、自信を持って「私のガクチカは研究です!」と語るべきなのです。問題は、「どう語るか」にあります。
「研究内容はガクチカに不向き」という誤解とその反論
ここで、一部で囁かれる「研究内容はガクチカとして話すべきではない」という意見について考えてみましょう。なぜ、このように言われることがあるのでしょうか? そして、それは本当に正しいのでしょうか?
ガクチカに研究内容を書くことが敬遠される理由
- 専門的すぎて伝わらない: 面接官が専門外の場合、内容を理解してもらえず、アピールにならない。
- 自己満足に見える: 研究の成果や面白さを熱く語っても、それが独りよがりに聞こえてしまう。
- コミュニケーション能力が低いと思われる: 専門的な話を一方的にしてしまい、相手への配慮がないと見なされる。
- 他の経験(サークル、バイト等)の方が人間性が見えやすい: 研究は個人作業のイメージが強く、協調性などが見えにくい。
確かに、これらの懸念には一理あります。しかし、それは「研究内容そのもの」が悪いのではなく、「伝え方」に問題がある場合に起こることです。
研究をガクチカとして書くべき理由 5選
- 問題は「内容」ではなく「伝え方」: 上記の懸念はすべて、後述する「失敗パターン」に陥った場合のものです。専門用語を避け、プロセスや学び、困難を乗り越えた経験に焦点を当て、相手に分かりやすく伝える工夫をすれば、研究は極めて魅力的なガクチカになります。
- 研究でしか示せない「思考の深さ」と「粘り強さ」: 前述の通り、研究活動を通して培われる論理的思考力、課題解決能力、粘り強さ、継続力などは、他の活動ではなかなか示すことが難しい、高度なポータブルスキルです。これらを具体的に示せるのは、理系大学院生の大きなアドバンテージです。
- 「再現性」を最も示しやすい経験の一つ: 研究における仮説検証プロセス(PDCA)や、予期せぬ問題への対応経験は、そのままビジネスの世界での課題解決プロセスに応用できます。企業が重視する「入社後の活躍の再現性」を示す上で、これほど適した経験は多くありません。
- 「知的好奇心」や「探求心」はポジティブな評価に: なぜその研究に興味を持ったのか、どのように探求していったのかを語ることは、あなたの知的な側面や物事への取り組み姿勢を示す良い機会です。これは多くの企業で歓迎される資質です。
- 重要なのは「経験から何を抽出するか」: ガクチカは、経験そのものを語るのではなく、その経験を通して得た「学び」や「強み」をアピールするものです。研究というリッチな経験から、企業が求める能力や資質を的確に抽出し、それを具体的なエピソードで裏付ければ、これ以上ない説得力を持つガクチカとなります。
結論として、「研究内容はガクチカに不向き」というのは、伝え方を誤った場合に限った話であり、本質的には大きな誤解です。むしろ、理系大学院生にとって研究は、自身の能力とポテンシャルを証明するための最高の題材なのです。大切なのは、その価値を正しく理解し、相手に響くように伝える努力をすることです。恐れる必要は全くありません。自信を持って、あなたの研究ストーリーを語る準備をしましょう。
「研究ガクチカ」で陥りがちな失敗パターン
研究経験が豊富な理系大学院生でも、ガクチカとして語る際に失敗してしまうケースが少なくありません。よくある失敗パターンを知り、同じ轍を踏まないようにしましょう。
- 専門用語の羅列で、面接官が理解できない:
- 自分の研究内容を熱心に語るあまり、専門用語や研究分野特有の背景知識を前提とした説明をしてしまう。
- 面接官は必ずしもその分野の専門家ではありません。「〇〇遺伝子の発現を△△法で解析し…」と言われても、ほとんどの場合理解できません。
- 結果として、「何を頑張ったのか」「どんな能力があるのか」が全く伝わらない可能性があります。
- 「研究テーマ」の説明に終始し、「あなた」が見えない:
- 「私の研究テーマは〇〇で、その社会的意義は△△です」といった説明に終始し、あなたがその研究に「どのように」取り組み、「何を」考え、「どんな困難」を乗り越え、「何を」学んだのかが語られない。
- 企業が知りたいのは研究テーマそのものよりも、**「あなた自身の行動と思考プロセス」**です。
- 「頑張ったこと」が抽象的で具体性に欠ける:
- 「実験をたくさん頑張りました」「粘り強く取り組みました」といった表現だけでは、具体的にどのような状況で、どれほどの努力をしたのかが伝わりません。
- どのような困難があり、それに対して具体的にどのような工夫や行動をしたのかを語る必要があります。
- 「成果」ばかりを強調し、プロセスが語られない:
- 「学会で発表しました」「論文がアクセプトされました」といった成果だけをアピールする。
- もちろん成果は重要ですが、企業は**「その成果に至るまでのプロセス」**で発揮された能力を知りたいと考えています。特に、失敗や困難から学び、それを乗り越えた経験は高く評価されます。
- 研究で得たスキルと、企業で活かせる能力が結びついていない:
- 研究を通して素晴らしいスキルを身につけていても、それが応募する企業の仕事内容や求める人物像とどのように結びつくのかを説明できない。
- 「だから、私のこの経験・能力は、御社でこのように活かせます」というアピールが不可欠です。
これらの失敗パターンを避けるためには、研究経験を**「構造化」し、「相手(企業)に伝わる言葉」**で語る必要があります。
研究を魅力的なガクチカにするためのフレームワーク:「STAR + P」

研究経験を効果的に伝えるためのフレームワークとして、有名な「STAR法」に、研究ならではの要素を加えた「STAR + P」を提案します。
- S (Situation): 状況 – あなたがどのような研究環境・状況に置かれていたか
- T (Task): 課題・目標 – あなたが取り組むべきだった具体的な課題や目標は何か
- A (Action): 行動 – 課題達成・目標達成のために、あなたが具体的に「どのように」考え、行動したか
- R (Result): 結果 – 行動の結果、どのような成果が得られたか、何を学んだか
- P (Process & Personality): プロセスとあなたらしさ – 特に困難だった点、試行錯誤のプロセス、そこで発揮されたあなたの強みや学び
このフレームワークに沿って情報を整理することで、論理的で分かりやすく、かつあなたの個性や強みが伝わるガクチカを作成できます。
「STAR + P」 各ステップのポイント
S (Situation): 状況設定 – 背景を簡潔に
- 研究テーマの概要: 専門用語を避け、「誰にでも分かる言葉」で、研究の目的や背景を簡潔に説明します。「〇〇(社会的な課題など)を解決するために、△△(研究対象)の□□(メカニズムなど)を明らかにすることを目指していました」のように、大きな目的から入ると分かりやすいでしょう。
- 研究室の状況: 研究室の規模、指導方針、利用可能な設備など、あなたの行動に影響を与えた背景を必要に応じて補足します。(例:「指導教員からは大きな方向性だけが示され、具体的な実験計画は学生主体で進める方針の研究室でした」)
- 期間: 研究に取り組んだ期間(修士2年間など)を明記します。
ポイント: ここで詳細を語りすぎないこと。あくまで、これから語る「課題」と「行動」の前提となる情報を、1~2文程度で簡潔に伝えるのが目的です。
T (Task): 課題・目標設定 – 具体的なミッション
- 研究全体の目標: 研究を通して達成すべきだった最終的なゴールは何か。
- あなたが直面した具体的な課題: 研究を進める上で、特に困難だった点、乗り越えるべきだった壁は何か。これがガクチカの「核」となります。
- 例:「先行研究では確立されていなかった〇〇の測定方法を、自ら確立する必要があった」
- 例:「期待通りの実験結果が得られず、原因究明と計画の練り直しが急務だった」
- 例:「限られた予算と期間の中で、〇〇という目標を達成する必要があった」
- 目標の具体性・定量性: 可能であれば、目標を具体的に、あるいは定量的に示します。(例:「〇〇の精度を従来比で△△%向上させる」「××ヶ月以内に学会発表レベルのデータを揃える」)
ポイント: あなたが「何を成し遂げようとしたのか」「どんな困難に立ち向かったのか」を明確に示す部分です。課題が具体的であるほど、次の「行動」の価値が高まります。
A (Action): 行動 – あなたの思考と工夫を詳細に
ここがガクチカの最重要パートです。課題に対して、あなたが**「どのように考え」「具体的に何をしたのか」**を、プロセスが目に浮かぶように詳細に記述します。
- 課題分析: なぜその課題が発生したのか、原因をどのように分析したか。
- 仮説設定: 解決のために、どのような仮説を立てたか。なぜその仮説に至ったのか。
- 計画立案: 仮説を検証するために、どのような実験計画やアプローチを考えたか。複数の選択肢を比較検討した場合は、そのプロセスも述べると良いでしょう。
- 実行と試行錯誤: 計画を実行する上で、どのような工夫をしたか。予期せぬ問題にどう対応したか。失敗から何を学び、どのように軌道修正したか。(ここを特に具体的に!)
- 例:「〇〇という問題に対し、文献調査だけでなく、他分野の研究者にも積極的に質問し、△△という新たなアプローチを着想した」
- 例:「実験が再現せず、考えられる原因をリストアップし、一つずつ潰し込みを行った結果、□□という盲点を発見した」
- 例:「高価な試薬を使わずに目的を達成するため、既存のプロトコルを改良し、コストを〇〇%削減する代替法を考案・実行した」
- 周囲との連携: 指導教員や他の学生、共同研究者とどのように連携し、協力を得たか。
ポイント: 「頑張った」ではなく、「何を」「どのように」頑張ったのかを具体的に書きます。あなたの主体性、思考力、問題解決能力、粘り強さが最もよく表れる部分です。第三者が読んでも、あなたが奮闘している姿がイメージできるように記述しましょう。
R (Result): 結果 – 成果と学びを明確に
- 客観的な成果: 行動の結果、どのような成果が得られたか。
- 研究上の成果(目標達成、課題解決、新たな知見の発見、学会発表、論文投稿など)
- 可能であれば定量的に示す(例:「〇〇の収率を△△%向上させた」「目標としていた□□の解明に成功した」)
- 学びと成長(重要!): この経験を通して、あなた自身が何を学び、どのように成長したか。これが企業が最も注目する点の一つです。
- 例:「粘り強く試行錯誤を繰り返すことで、困難な状況でも諦めずに解決策を見つけ出す問題解決能力が向上した」
- 例:「多角的な視点から原因を分析する重要性を学び、論理的思考力が深まった」
- 例:「計画通りに進まない状況でも、柔軟に計画を修正し、目標達成に向けて主体的に行動する力が身についた」
- 貢献: あなたの行動が、研究室やチームにどのような貢献をもたらしたか。(例:「確立した実験手法が後輩の研究にも活用されるようになった」)
ポイント: 成果だけでなく、**「その経験から何を得たのか」**という内面的な成長を必ず記述しましょう。これがあなたのポテンシャルを示す重要な要素となります。
P (Process & Personality): プロセスの深掘りとあなたらしさ
STARだけでは伝えきれない、研究の泥臭いプロセスや、そこで発揮されたあなたならではの強み、価値観を補足します。
- 特に困難だった点とその乗り越え方(深掘り): Actionで触れた困難について、さらに具体的なエピソードや、その時の心境、乗り越えるための思考プロセスを深掘りします。
- 試行錯誤の具体例: 失敗談や、そこからどのように立ち直り、次のアクションに繋げたかの具体的なプロセスを語ることで、人間味や粘り強さが伝わります。
- あなた自身の強みや価値観: その経験を通して、どのような自分の強み(例:探求心、知的好奇心、負けず嫌い、計画性、協調性など)が発揮されたと感じるか。研究に対するあなたの姿勢や情熱。
- 研究の面白さ・やりがい: あなたが感じた研究の面白さや、やりがいを自分の言葉で語ることで、仕事に対する意欲や熱意を伝えることができます。
ポイント: ここであなた自身の「色」を出すことができます。単なる成功体験だけでなく、苦労や失敗、そこから得た教訓を正直に語ることで、より人間的な魅力が伝わり、面接官の共感を呼びやすくなります。
この「STAR + P」フレームワークを使って、あなたの研究経験を整理・構造化し、アピールしたい能力に合わせてエピソードを選び、磨き上げていきましょう。
【例文】研究をガクチカとして伝える具体例(STAR + P 活用)
では、実際に「STAR + P」フレームワークを活用して作成したガクチカの例文をいくつか紹介します。専門分野が異なる場合でも、構成や考え方の参考にしてください。
例文1:生命科学系(粘り強い試行錯誤による課題解決)
【S:状況】 私は大学院で〇〇病解明のため、タンパク質Aの機能解析に従事しました。しかし、細胞内で安定発現させる実験系が未確立でした。
【T:課題・目標】 私の課題は、タンパク質Aを安定かつ機能的に発現させる実験系を自ら確立することでした。目標は3ヶ月以内に系を構築することでした。
【A:行動】 通常の方法では失敗が続きました。そこでタンパク質自体の不安定さに着目し、文献を再調査して安定化タグ付加と特殊培養という新しい手法を考案し、実行しました。
【R:結果】 約2ヶ月半の試行錯誤を経て、安定発現系の確立に成功し、後続の研究へ進むことができました。この経験から、多角的な思考と粘り強い試行錯誤の重要性を学びました。
【P:プロセスとあなたらしさ】 度重なる失敗にも知的好奇心から諦めず、原因究明と代替案の模索を続けました。このことから、粘り強い課題解決力が自身の強みだと認識しました。
例文2:情報科学系(データ分析とアルゴリズム改善による性能向上)
私は大学院で深層学習による〇〇の画像検出精度向上研究に取り組みました。既存モデルは特定の環境下で誤検出が多いという課題がありました。
【T:課題・目標】 私の課題は、環境変化に強い高精度な新しいアルゴリズムを開発することでした。目標は検出精度F値を0.90以上にすることでした。
【A:行動】 まずデータ分析で誤検出の原因を特定しました。そして「背景除去強化(GAN活用)」と「照明変動への頑健性向上(正規化導入)」という仮説に基づき、新しいアルゴリズムを実装し、最適化しました。
【R:結果】 目標を超えるF値0.93を達成し、誤検出を70%削減しました。この成果は国際学会で発表しました。この経験から、データに基づく課題分析と仮説検証サイクルの重要性を学びました。
【P:プロセスとあなたらしさ】 限られた計算資源の中で効率的な計画を立てて実験を進めました。また、他分野の技術を応用してブレイクスルーしました。計画性と柔軟な発想力が自身の強みだと考えています。
例文3:化学・材料系(実験計画の工夫による効率化と目標達成)
【S:状況】 私は大学院で新規〇〇材料の開発研究を行いました。複雑な合成プロセスにおいて、目標特性を得るための最適条件探索が課題でした。
【T:課題・目標】 私の課題は、限られた期間内で膨大なパラメータの中から目標特性を達成する最適条件を効率的に探索することでした。
【A:行動】 当初の非効率な経験則頼りの方法から脱却し、**実験計画法(DOE)**を自ら学び、導入しました。これにより、統計分析を用いて効率的に最適条件を探索しました。
【R:結果】 DOEの導入により実験回数を約1/5に削減し、目標特性を約半年で達成できました。この経験から、データに基づく計画的なアプローチの重要性を学びました。
【P:プロセスとあなたらしさ】 研究室に前例のない手法を独学で習得し、周囲を説得して導入しました。現状を改善しようとする主体的な探求心が自身の強みだと感じています。
これらの例文はあくまで一例です。あなたの研究内容や経験に合わせて、具体的なエピソードを盛り込み、あなた自身の言葉で語ることが重要です。
研究ガクチカをさらに魅力的にするためのTips
- 専門用語は徹底的に言い換える: 面接官が文系出身者である可能性も考慮し、「中学生にも分かるレベル」で説明する意識を持ちましょう。比喩表現を使ったり、身近なものに例えたりするのも有効です。
- 「なぜその研究を選んだのか?」も語れるように: 研究テーマへの動機や情熱を語ることで、あなたの価値観や興味の方向性を示すことができます。
- 数字(定量情報)を意識的に盛り込む: 「多くの実験」→「〇〇回の実験」、「改善した」→「〇〇%改善した」、「長期間」→「〇〇ヶ月間」のように、可能な限り具体的な数字を入れることで、説得力が増します。
- 失敗談・苦労話を恐れない: 成功体験だけでなく、失敗から何を学び、どう乗り越えたかを語ることは、あなたの人間性、成長力、ストレス耐性を示す上で非常に効果的です。
- 企業の求める人物像との接続を明確に: 企業のウェブサイトや採用情報をよく読み込み、あなたの研究経験で培われたどの能力が、その企業でどのように活かせるのかを具体的に結びつけてアピールしましょう。(例:「貴社の〇〇という理念に共感しており、私の研究で培った粘り強い課題解決能力は、△△という事業課題の解決に貢献できると考えています」)
- 簡潔に話す練習も: ESでは詳しく書けても、面接では限られた時間で要点を伝える必要があります。「1分で説明してください」と言われても対応できるよう、要約する練習もしておきましょう。
- 熱意を込めて語る: フレームワークに沿って論理的に語ることは重要ですが、それだけでは機械的な印象を与えかねません。研究に対するあなたの情熱や、その経験を通して得た学びに対する実感を、自分の言葉で熱意を込めて語ることが、最終的に相手の心を動かします。
まとめ:研究はあなたの価値を証明する最高のストーリー
理系大学院生の皆さん、あなたの研究活動は、他の誰にも真似できない、貴重な経験と能力開発の機会です。専門性が高いためにガクチカとして語りにくいと感じるかもしれませんが、それは伝え方次第です。
今回紹介した「STAR + P」フレームワークを活用し、
- 状況 (Situation) と 課題 (Task) を明確にし、
- あなたの具体的な行動 (Action) と 思考プロセス を詳細に語り、
- 得られた結果 (Result) と そこからの学び を示し、
- 困難を乗り越えたプロセス (Process) や あなたらしさ (Personality) を加える
ことで、あなたの研究経験は、企業にとって非常に魅力的な「ガクチカ」へと昇華します。
「ガクチカ 研究」というキーワードで検索してたどり着いたあなたは、すでに自分の研究経験の価値に気づき始めています。あとは、それを相手に伝わる形に磨き上げるだけです。
自信を持って、あなたの研究ストーリーを語ってください。それは、あなたがどれだけ困難な課題に立ち向かい、粘り強く考え抜き、成長してきたかの証明です。その経験は、必ずやあなたの就職活動、そしてその先のキャリアにおいて、大きな力となるはずです。
応援しています!