「なぜ、その研究を選んだのですか?」 「あなたの研究内容を、文系の人にも分かるように説明してください」
理系学生の就職活動において、面接で必ずと言っていいほど聞かれる「研究」に関する質問。専門分野だからこそ、どう伝えれば自分の魅力が最大限伝わるのか、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、理系学生が面接で頻出する質問と、面接官に「この学生は論理的で面白い!」と思わせるような回答のポイントを、具体的な例文とともに徹底解説します。
この記事を読めば、あなたの研究内容や論理的思考力を効果的にアピールできるようになり、自信を持って面接に臨むことができるはずです。

<プロフィール>
✔2024年修士卒
✔学会発表2回、原著論文投稿2本
✔早期選考で国内大手企業複数内定
✔現在、国内大手企業で勤務中
✔研究実績により奨学金半額免除
最重要!研究内容に関する質問と回答例
面接官が研究について質問するのは、単に研究内容を知りたいからだけではありません。あなたの主体性、論理的思考力、プレゼンテーション能力、そして困難に立ち向かう姿勢など、ビジネスの世界で求められるポテンシャルを見極めようとしています。
Q1. 「なぜその研究テーマを選んだのですか?」
質問の意図:
- あなたの興味・関心の源泉は何か
- 物事に対する主体性や目的意識の有無
- テーマ設定における論理的思考力
回答のポイント: 「なんとなく研究室に配属されたから」ではNGです。たとえきっかけが些細なことでも、自分なりの目的意識や課題感と結びつけて語ることが重要です。
- Step1: きっかけ(原体験): なぜその分野に興味を持ったのか、具体的なエピソードを語る。(例:高校時代の経験、ある本との出会いなど)
- Step2: 課題意識: その分野のどんな点に課題を感じ、解決したいと思ったのかを説明する。
- Step3: テーマへの接続: その課題意識が、現在の研究テーマにどう繋がっているのかを論理的に示す。
【回答例:情報系】
私がAIによる画像認識の研究を選んだのは、高校時代に祖父が病気で倒れた際、CT画像診断の結果説明が非常に複雑で、家族が理解に苦しんだ経験がきっかけです。その時、高度な医療技術も、患者やその家族に正しく伝わらなければ意味がないと痛感しました。 そこで、AI技術を用いて画像から病気の兆候を早期発見するだけでなく、その診断根拠を誰にでも分かりやすく可視化するシステムを構築したいと考えました。現在の研究では、特に判断根拠の「説明可能性」に焦点を当て、医師と患者のより良いコミュニケーションを実現することを目指しています。
Q2. 「あなたの研究内容を、文系の人にも分かるように1分で説明してください」
質問の意図:
- 要点を的確に捉える能力
- 複雑な事象を簡潔に説明するプレゼンテーション能力
- 相手の知識レベルに合わせたコミュニケーション能力
回答のポイント: 専門用語は徹底的に避け、相手は専門知識がゼロという前提で、身近なものに例えたり、比喩表現を用いたりして説明することが重要です。「何のために(背景・目的)」「何を(研究内容)」「どうやって(手法)」「それによって何が嬉しいのか(将来性・貢献)」という構成で話すと、論理的で分かりやすい説明になります。
【回答例:化学系】
(背景・目的)皆さんが毎日使うスマートフォンのバッテリーは、もっと長持ちすれば便利だと思いませんか?私の研究は、そのバッテリーの寿命を2倍に伸ばすことを目指すものです。 (研究内容)具体的には、バッテリー内部で電気を蓄える役割を持つ「正極材料」という物質に注目しています。 (手法)例えるなら、電気を蓄えるスポンジの穴の形を、より効率的なハチの巣のような構造に変えることで、たくさんの電気を安定して蓄えられるようにする研究です。 (将来性・貢献)この技術が実現すれば、スマートフォンの充電回数が減るだけでなく、電気自動車の航続距離を飛躍的に伸ばすことにも繋がり、環境問題の解決にも貢献できると考えています。
Q3. 「研究で最も困難だったことは何ですか?それをどう乗り越えましたか?」
質問の意図:
- 困難に直面した際のストレス耐性
- 課題に対する分析力と解決能力
- 粘り強さ、試行錯誤する力
回答のポイント: 失敗談そのものではなく、「失敗から何を学び、どう次に行動したか」というプロセスが評価されます。**STARメソッド(Situation:状況、Task:課題、Action:行動、Result:結果)**を意識して構成すると、説得力が増します。
【回答例:生物系】
(Situation)私の研究では、特定の遺伝子Xを破壊したマウスを作成し、その影響を調べる必要がありました。しかし、何度実験しても遺伝子破壊が成功せず、3ヶ月間全く成果が出ない状況が続きました。 (Task)原因が分からず、計画が大幅に遅れるという困難な状況でした。 (Action)そこで私は、一度立ち止まり、考えられる失敗要因を50項目以上リストアップしました。そして、過去の論文を徹底的に読み込み、他の研究室の成功事例と比較分析した結果、試薬の濃度と温度管理に問題がある可能性に気づきました。指導教官や先輩に相談し、仮説に基づいて実験プロトコルを根本から見直して再挑戦しました。 (Result)その結果、安定して遺伝子破壊マウスを作成することに成功し、研究を軌道に乗せることができました。この経験から、行き詰まった時こそ客観的に状況を分析し、周囲を巻き込みながら粘り強く試行錯誤する重要性を学びました。
Q4. 「その研究から何を学びましたか?」
質問の意図:
- 経験を抽象化し、汎用的なスキルとして認識できているか
- 自己の成長を客観的に分析する力
回答のポイント: 「〇〇の知識が身についた」という専門スキルだけでなく、**ポータブルスキル(持ち運び可能な能力)**に言及することが重要です。
- 課題設定能力: 未知の課題に対して、どこに問題があるかを見極める力
- 仮説検証能力: 限られた情報から仮説を立て、それを証明するための計画を立て実行する力
- 粘り強さ: 思うような結果が出なくても、諦めずに試行錯誤を続ける力
- 情報収集・分析能力: 膨大な論文やデータから、必要な情報を効率的に収集・分析する力
【回答例】
この研究を通じて、単に〇〇の知識を深めただけでなく、「未知の課題に対するアプローチ方法」を体系的に学びました。当初は手探りで実験を繰り返すだけでしたが、指導教官のアドバイスを受け、常に「仮説→検証→考察」というサイクルを意識するようになりました。この仮説検証プロセスを粘り強く繰り返す力は、貴社で新しい製品開発に取り組む際にも、必ず活かせると考えております。
Q5. 「研究で培ったスキルを、当社でどう活かせますか?」
質問の意図:
- 企業への理解度
- 自己のスキルと企業のマッチング度
- 入社後の貢献イメージ
回答のポイント: 企業の事業内容や職務内容を具体的に理解した上で、自分のスキルが「どの部門」で「どのように」貢献できるのかを明確に述べましょう。企業研究の深さが問われる質問です。
【回答例:機械系メーカー志望】
私が研究で培ったのは、シミュレーション技術を駆使した熱流体解析のスキルです。特に、3D-CADデータから複雑なモデルを作成し、製品内部の熱の伝わり方を精密に予測することを得意としています。 貴社の主力製品である〇〇(製品名)は、高性能化に伴い熱対策が重要な課題であると認識しております。私のこの解析スキルを活かすことで、試作品を製作する前の設計段階で熱問題を効率的に洗い出し、開発期間の短縮とコスト削減に貢献できると考えております。具体的には、〇〇部門で設計チームの一員として、製品のさらなる信頼性向上に挑戦したいです。
論理的思考力を問う質問と対策
理系学生には、物事を構造的に捉え、筋道を立てて考える「論理的思考力」が特に期待されています。
「当社の事業における課題を1つ挙げ、その解決策を提案してください」
- 対策: 企業研究を徹底し、IR情報や中期経営計画、ニュースリリースなどから企業が公式に発表している課題を把握する。その上で、自分の専門性や視点を加えた独自の解決策を提案できると高評価。
「〇〇の売上を2倍にするにはどうすればいいですか?」(フェルミ推定)
- 対策: 正確な答えは求められていません。未知の問いに対して、どのような要素に分解し、どのような仮説を立てて答えを導き出すか、その思考プロセスが評価されます。「売上=客数×客単価」のように数式に分解し、それぞれの要素をどう増やすか、というフレームワークで考えると答えやすくなります。
その他の頻出質問
質問例 | 回答のポイント |
---|---|
チームで何かを成し遂げた経験は? | 研究室での共同研究や学会発表の準備など、自分の役割、貢献、協調性を具体的に語る。 |
学業以外に力を入れたことは?(ガクチカ) | なぜそれに挑戦し、どんな課題があり、どう乗り越え、何を学んだのかを論理的に説明する。その上で、アルバイトやサークル活動で培った「計画性」や「チームでの課題解決能力」が入社後にどう活かせるか、具体的に結びつけると説得力が増す。 |
志望動機を教えてください。 | 「なぜこの業界?」「なぜこの会社?」「入社後何をしたい?」の3点を、自分の研究経験や価値観と結びつけて語る。 |
就職活動の軸は何ですか? | 「社会貢献性」「技術力」「挑戦できる環境」など、自分のキャリアプランに基づいた明確な軸を示す。 |
長所と短所を教えてください。 | 長所は具体的なエピソードで裏付け、短所は改善努力とセットで語る。研究活動に絡めると理系らしさを出せる。(例:短所「集中しすぎると周りが見えなくなる」→改善策「ポモドーロテクニックで定期的に休憩し、進捗共有を心がけている」) |
周囲からどんな人だと言われますか? | 「探究心が強い」「粘り強い」など、研究における自分の強みと結びつく評価を、第三者の視点から客観的に語る。 |
ストレス解消法は? | 健全なストレス解消法を持っていることを伝え、自己管理能力をアピールする。 |
最後に何か質問はありますか?(逆質問) | 意欲を示す絶好の機会。「調べれば分かること」は避け、入社後の働き方やキャリア、社員の方のやりがいなど、ポジティブで具体的な質問を用意しておく。 |
まとめ
理系学生の面接は、専門的な研究内容を「いかに分かりやすく、魅力的に語れるか」が鍵となります。
- 質問の意図を汲み取る
- 専門用語を避け、例え話を使う
- STARメソッドで具体的に語る
- スキルと企業の事業を結びつける
これらのポイントを押さえるだけで、あなたの評価は格段に上がります。
面接は「試験」ではなく、企業との「対話」の場です。この記事で紹介した例文はあくまで一例。ぜひあなた自身の言葉で、研究への情熱や経験を語ってください。応援しています!